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最高裁判所第三小法廷 平成元年(行ツ)30号 判決

静岡県三島市大社町五番一号

上告人

市川隆一

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被上告人

特許庁長官 吉田文毅

右当事者間の東京高等裁判所昭和五五年(行ヶ)第四〇六号審決取消請求事件について、同裁判所が昭和六三年一二月一九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 安岡滿彦 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己)

(平成元年(行ツ)第三〇号 上告人 市川隆一)

上告人の上告理由

第一点 原判決の判断に判決に影響をおよぼすことが明らかな採証法則の違背がある。

1 本件特許出願発明の要旨は「らせんの回転方向が同じらせん体を並列にらせん翼の部分を相手のらせん体のらせん溝に相互に遊合にはめて各らせん体を別個の欠円筒型の外被で覆うように組立てた液体ポンプ、ガス圧縮機等において、らせん翼間にある各種の流体の一部が遠心力の作用で外筒の欠円個所を通過するらせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量のうち両らせん体のらせん翼の外周縁が外筒円形室の欠円個所を通過する当初の遠心力放射流出始点から両らせん軸中心線(らせん体対で胴車の中心を結ぶ両胴車の軸に垂直な直線)を通過するまでの区間におけるそれぞれの遠心力放射流出点(不特定多数のそれぞれの投出起点)の位置にあるらせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量が両らせん軸中心線を通過する方向に流出するように考慮することによつて、迎え角を与えられている相手のらせん体のらせん翼の迎え角斜面の正面に相対的に動くようにして移行するようにし、同時にその背面に移行しないようにならしめる如く定めた両らせん体の遠心力放射流出始点または外筒の欠円個所に対接するらせん翼外周縁上の点をよこぎつて該外周縁上の点の回転円の円周接線に対し相手のらせん体の胴車の外側が近くとも共通内接線として接するかもしくは接しないで離れて該円周接線が両らせん軸中心線を通過するように胴車を細くするかまたは両らせん体の中心距離間隔を引き離して遊合間隙13を広く形成することを特徴とする液体ポンプ、ガス圧縮機等において、らせん翼外周縁に対接する外筒内壁部分を含む外筒の部分を本体より切り離した可動仕切板9、9'を上げて遠心力放射流出始点の位置をらせん体の回転に対し逆の方向へ移動できるように考慮することによつて遠心力放射流出する流体の運動量を両らせん体部分間の共通外接線に沿う方向に運動させる割合を多くして遠心力放射流出する流体の運動量が迎え角を与えられている相手のらせん体のらせん翼の迎え角斜面の正面に対し移行する割合を少なくし背面に移行する割合を多く得るようにならしめる如く定めたらせん翼の外周に対接する外筒の内壁部分を含む外筒の部分を本体より切り離して得た可動仕切板9、9'を上下に摺動移動自在に所要の位置に停止できるように形成することを特徴とする液体ポンプ、ガス圧縮機等における二本のらせん体を並列に用いた遠心合力容積軸流型ねじポンプにおける遠心力放射流出始点調節用可動仕切板装置」(昭和六一年一月二二日附原告準備書面(第一〇回)訂正申立書で訂正した昭和六一年一月一六日附原告準備書面(第一〇回)、請求の原因二、三丁表一一行の「原告の出願にかかる前記発明の要旨は」の記載から九丁表一一行の「簡略に過ぎたものであります。」の記載」までの記載、判決第二請求の原因、四、2、(一)八丁裏七行の「(詳しくは遠心力放射流出始点位置調節用可動仕切板)」の記載、昭和六二年六月二二日附原告準備書面(第一一回の二)六丁表六行の「昭和四三年」の記載から一九丁表末行の「記載すべきところを簡略に過ぎたものである」までの記載等)である。

2 本願の発明のものは、可動仕切板9、9'の先端をらせん翼外周縁部分に回転可能に密接させて、正常の位置(可動仕切板9、9'を閉鎖の状態)にするときは、遠心力放射流出始点におけるらせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量は相手らせん翼の迎え角斜面の正面に移行し、同時にその背面に移行しないように(従って、相手らせん体のらせん溝の出口方向に運動するように、同時に入口方向に運動しないように)したものである。それで、らせん翼間にある流体の共回り運動を阻止することによつて、らせん体の回転によるねじ押しで流体を出口に送り出すとともに入口より導入することができるようにしたものである。そのとき、らせん体を更に一層次第に高速度で回転するようにしても、遊合間隙13を所要に広く形成してあるので遠心力放射流出始点におけるらせん翼の外側から速度の方向に流出する流体の運動量をして相手らせん翼の迎え角斜面の正面に対し移行するようにし、同時にその背面に移行しないようにしたことによつて、背面に起るべき大気圧以下の吸上げ圧力を減少しないようにし、背面と流体とが引き合う力を減少しないようにし、外筒の外部にある流体を大気の圧力を利用して外筒内のらせん翼間に導入、充填する作業を阻害せんとする逆作用を防止することができるようにしたものである。(昭和六三年一月一四日附原告準備書面(第一三回の二)一三丁裏八行の「被告準備書面(第二回)の弁論で」の記載から一四丁表六行ないし次行の「反論されなかつた」までの記載)。

3 昭和三〇年一二月七日付拒絶理由通知書(甲第八号証)の理由、下から第七行に上げられた、英国特許第六二〇六八四号明細書抜粋〔グループ26昭和二七年四月二五日受入〕(甲第八号証の二)の引例は、外筒内で並列して同一方向に回転するねじ棒のねじ山とねじ芯との間の間隙を狭くしてあることは(昭和五八年一〇月一五日附原告準備書面(第八回)一丁裏四行ないし六行の「別紙の通り「甲第八号証の二」(「英国特許第六二〇六八四号明細書抜粋」写)を追加提出します。)で提出した、英国特許第六二〇六八四号明細書抜粋(甲第八号証の二)の図面をみれば、明らかである。従つて、そのねじ山を更に一層次第に高速度で回転するときは、遠心力の逆作用で外筒の外部にある流体を大気の圧力を利用して外筒内に導入することが次第に困難になることが予想され、ねじの回転とともにねじの密封部がねじの方回へ移動する(判決の理由三、2、(二)二八丁裏一〇行ないし末行の「ねじの回転とともに移動密封部がねじの軸方向へ移動する」の記載)ようになつていても、遠心力の逆作用で入口より空気、水等の各種の流体を大気の圧力を利用して導入することが困難になつたときは、ポンプ作業は成立しないことが予想できるものである。(昭和六二年九月一〇日附原告証拠方法補充提出書二丁表四行の「1英国特許第六二〇六八四号明細書抜粋」の記載から同裏四行の「防止する等の意途を明らかにしていない」までの記載および三丁表七行の「3 前記した英国特許の引例」の記載から五丁表一〇行の「ポンプ作業は成立しないことがある。」までの記載等)。

原判決は、本願の発明は遠心力の逆作用を防止する顕著な作用、効果を具備するものであることを看過してした違背があり、民事訴訟法第三九四条に該当する。

以上いずれの論点よりするも原判決は違法であり破棄さるべきものである。

以上

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